日本海新聞 若者定住プロジェクト 挑戦―ジモトでCHALLENGE グッドヒル株式会社 スーツは勝負服から世を慈しむ調和服へ GOODHILL x nesnooシセイ堂デザインブランド
自分のスタイルが追求できるオーダースーツ。長年培ってきた高い技術力と、経験豊富なスタッフが顧客に寄り添い、ビジネスマンたちの思いを次々と形にしている。設立60周年を迎え、新たなプロジェクトに挑戦。今春、鳥取市のデザイン会社とコラボレーションした新たな地域デザインブランド「KIR*WIN(カーウィン)」とその商品「麒麟(きりん)をきるインテグラルオーダースーツ」が完成した。コロナ禍で、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しているが、ものづくりのこだわりと招運の願いを込めたスーツで夢と希望を与える。
新ブランド「KIR*WIN」と、その商品の一つ「麒麟をきるインテグラルスーツ」は昨年5月に、デザイン会社「シセイ堂デザイン」(同市吉方温泉3丁目)の提案で実現。同社独自のアパレルブランド「nesnoo(ネスノ)」が基調とする和柄の吉祥紋をテーマにしたデザインと、グッドヒルのスーツとのコラボレーションを考える中で、モチーフとして挙がったのが昨年日本遺産に認定された「麒麟獅子舞」と、ルーツとなる鳥取東照宮の本宮であり、徳川家康を祭る日光東照宮の装飾に多く配される「麒麟」だった。
「勝ち守り」「天下泰平」祈願としてあがめられる日光東照宮には、戦国の世を終わらせ泰平の世を築いた徳川家康が祭られている。家康公は、聖獣「麒麟」を厄除開運・天下泰平の象徴として信仰していた。そして鳥取県東部には、家康公のひ孫で、鳥取藩初代藩主池田光仲公が、その意思を受け継ぎ広めた伝統芸能「麒麟獅子舞」があることから「この思いをスーツに込めて、厳しい時代を乗り越えよう」と制作した。
ライフスタイルの変化と共に洋服文化もカジュアル化が進むが、「大事な商談など、ここぞというときにはスーツを着てほしい」と望む。利他の心を大切にする“紳士”のように、互いに調和を望み、新しい時代を築ければという思いがある。担当者は「お客さまの立場に寄り添いスタイルを提供することが作り手の使命であり、喜び。皆さまには平和を願い、調和、清浄平和のシンボルの麒麟をまとってほしい」と話す。
背景は、さまざまなアイテム展開が期待されるオリジナルデザインの「麒麟生地紋」で構成し、蒔(まき)絵風に仕上げた。日光東照宮の資料を源流にした4種類の麒麟をランダムに複数配置。幻想的で平和的な世界観を表現している。
新プロジェクトに寄せて
グッドヒル 代表取締役社長 吉岡秀樹
シセイ堂デザイン 代表取締役社長 植木 誠
業種の枠を超えて、“モノづくり”“コトづくり”に挑戦したことで、お互いに新たな経験や知見が得られました。そして1社だけでは成し得なかった、新たなビジネスモデルを構築しカタチにできました。共につながり、分かち合う麒麟の精神で、鳥取のさまざまな力を一つにして新たな魅力創造に挑んでいくきっかけにもなればと願います。
プロジェクトに携わった社員の声
優美な曲線が多いフォルム
DAセンター設計部2課 植田展子主任の話
曲線が多いフォルムが特徴的。ジャケットを正面から見てまず目につくのは襟。従来の標準的な襟と違って、幅、角度、カーブを調整した。ポケットのラインも、麒麟の表情を意識している。麒麟の優しさ、かっこよさにこだわった。
仲間の声を反映
DAセンター設計部2課 保木本ゆかりさんの話
社内の新しい試みとして、色合いなどを決めるための社員投票を行い、皆で作り上げた感がある。物づくりの楽しさを再認識した。
とことん配置の微調整
裁断センター 砂田武宏場長の話
ジャケットをめくった時に見える前裏に、麒麟が左右同じ大きさで出るよう、麒麟の座標をとり、CADマーカーで前裏に麒麟が入るように配置、何度も微調整した。位置確認後、NCデータを作成し、レーザー裁断機を使用してカットする。いい位置に配置できて良かった。
緻密な模様打ち合わせ
部品センター 網谷かよ子副場長の話
ブランドマークの刺繍(しゅう)をスーツの内ポケットの下や、ワイシャツの襟やカフスに施すが、小さな模様の部分が見せられなくて苦労した。刺繍糸は約90色あるので、好みの色を選んでほしい。
オリジナルブランドマーク▶▶▶▶▶
ブランド名「KIR*WIN」は、「KIRIN(きりん)」の中にWを入れて「勝ちスーツ」の意味を込めた。マークの上部は天を翔(か)ける日光東照宮の資料から起筆した霊獣麒麟、中央にはコンパスで北極星を表した。背景には鳥取の麒麟獅子で円弧を描いている。